【国会報告】厚生労働委員会で質疑を行いました。

 昨日の厚労委員会、自治体の枠を越えた患者移送システム構築について引き続き。特に田村厚労大臣の誤った答弁、誤った認識を正すところに重点を置いた質疑でした。
 今とこれからの日本においてどうしても必要な自治体の枠を超えた医療融通(患者移送システム)。過去にもインフルエンザの大流行期に東京都で救急医療でたらい回しがあった。これからも更なる大波が来るかもしれないし、いつまた同様もしくはもっと大規模なパンデミックが起こるかもしれない。
 総理との4月23日質疑で総理からは「医療提供体制がひっ迫する中で、都道府県の壁にこだわることなく国を挙げて対応していくべきというのは、私も同じ考え方であり、貴重な提案に感謝申し上げたいと思います。」との答弁をいただいた。
 
 当然、厚労省はこの答弁に基づき具体化に向けて検討すべきだが、前回、田村大臣はちゃんと検討したかさえハッキリと答えずいい加減な答弁だったので、まず「検討の事実があるのか」を事務方に確認。
 最初、お茶を濁したような曖昧な答弁だったのでさらに突っ込むと「搬送の考え方含め検討はしている」。
 当然だ。憲法72条により、「内閣を代表して行政各部を指揮監督する」総理が前記のとおり答弁されている問題につき、検討もしないなどあり得ないだろう。
次に前回質疑で「(移送された重症患者が)大阪から滋賀で一件ありますが、これも結局また大阪に戻っている。理由はよく分からないんですが、人工呼吸器をつけたまま大阪に戻られたという話であって」と答弁された件。あたかも送り返されかのような口ぶりだった。
 おかしいなと思い大阪府に問い合わせると「滋賀県でしっかり治療を受けて重症を脱し、その後大阪の軽症・中等症病床に移って入院中とのこと。その点厚労省に正すと、
「事実関係確認したところ確認に不備があった。人工呼吸器をつけたままではなかった。気管切開していたので酸素投与(吹き流し)は受けていたが、人工呼吸器からは離脱していた。この場を借りてお詫び申し上げる。誠に申し訳ございませんでした」
 補足すると、人工呼吸器から離脱することが大事で、自分で呼吸していて補助的に酸素投与されているだけということ。重症者の定義からも外れる。
 また、やはり前回、大臣が「ドクターヘリは重症者移送にはスペースの問題がある。気圧の問題がある」と答えられたが、そもそもドクターヘリには人工呼吸器が備えられており、患者移送にも使われている。さらに、自衛隊にはドクターヘリの2〜8倍の輸送人員の中・大型ヘリとヘリ搭載可能な人工呼吸器がある。それだけでなく、「空飛ぶICU」(機動衛生ユニット)があり、それを輸送できる輸送機がある。この点について防衛省に尋ねたところ
 「人口呼吸器搭載可能ヘリは250機。機動衛生ユニットは小松基地に4機、これを収容可能な輸送機は全国に21機ある。この機動衛生ユニットで人工呼吸器を付けたまま患者を移送した実績は平成29年からで11件ある。」
つまり、日本にもコロナの重症患者を広域搬送できる物的・人的資源はきちんとあるのだ。
 こういった大事な問題について、私が数日で調べられる程度の事実について調査も確認もせず、適当な思い込みだけでコロナ患者の広域搬送は出来ない、と「厚労大臣」が「国会」で正式に答弁するのは何故なのか?
広域搬送できないと思い込んでいるのか?自治体の枠を超えた移送システム構築が面倒なのか?既得権益団体や自治体間の利害調整をするのが嫌なのか。それとも現場仕事に汗を流すのは厚労省はやらないのか?。大臣に尋ねた。答弁は、
「勉強不足で申し訳ありません。これだけあればドクターヘリ等々不備しているので防衛省からいろんなものお借りできる。一応指示はして、知事会に投げた。出したい県は沢山あるが受け手くれる県があるか、指示出している。なんの検討もしていない訳ではない。一方で、確保病床は常に空いているわけではない。自分の県のために確保している。知事会の方に投げさせていただいて検討している。」
 
 知事会に投げて検討しているのは「一歩前進」、しかしスピード感が足りない。昨日のテレビ中継もあった議院運営委員会で西村大臣にこの問題尋ねたところ「大阪府→滋賀県、大阪府→神奈川県、 兵庫県→鳥取県」という実例がある、とまるで国が調整したかのような答弁。しかし、これは自治体同士の努力によるもので単発例。その点厚労省に確認すると、「自治体間のもの。全部を承知していない」との答弁。
 この問題、フランスでは昨年3月、パンデミック発生から1ヶ月でTGVの改造までして多発州から、少ない州に重症患者を移送している。ドイツでは、国境の壁さえ越えて緊急救命機を他国に派遣して患者を受け入れている。
 
 昨年4月、ドイツのハイコ・マース外相は
「友人であるイタリアのそばにいるのだから、ともに戦うしかない」
と述べてイタリアの患者を受け入れたのだ。こんな友人がいればどんなに頼もしいことか。
 ところが、日本では、県境を一歩越えれば友人ではなくなる。ともに戦う国民ではなくなってしまうのか?大臣に尋ねた。大臣は、
「確保病床ずっともっている訳ではないし、自分の県が感染が拡大したときように病床確保しているのではあるが、出す方も自分のとこが感染広がったときに受けてもらえるということなので、意向を聞きながらネットワークが組めるか投げかけを始めさせていただく」
 私も少しくらい余っているのなら言わない。しかし、重症者用病床4500あり、重症者は1500人。3千空いている。しかも圧倒的に大都市圏で感染者多い。大事なことを大臣は答弁されたが、出せば、いざという時に受けてもらえる。助け合うことはどの県にとっても必要であろう。「ネットワークが組めるか投げかけを始めさせていただく」という答弁があり、この件は一歩前進があった。
 次は尾身会長と。こちらは、尾身先生がお疲れだったのか、質問の趣旨を理解 していただけず、話がかみ合わなかった。
 議題は「変異株の重症化率は高いのか?」
 大阪府がアドバイザリーボードに出した資料を見ても、第3波と第4波で各年代の重症化率に著変はなく、全体の重症化率はわずかに下がっている。ただ、変異株陽性者だけを抽出した集団は重症化率が上がっているとの数値が示されている。しかし、確認すると、変異株陽性者は、Ct値30以下の集団。なぜかといえば、ゲノム解析がウイルス量少ないとできないので、Ct値が小さい(=ウイルス量多い)ものだけ抽出して検査しているとのこと。それでは、ウイルス量が少ない陽性者は排除されてしまうので当然重症化率が高まることになる。感染研が発表した「変異株は重症化率が高い」という論文も同じ構造。この点について尾身会長に尋ねると、「第4波の重症化率算出も、同じCt値でやっていると確認した」とのやや頓珍漢なお答え。その点については疑義を呈していない。
 
 次回は、尾身先生と、前提に対する理解を揃えて、中身の濃いディスカッションをじっくりとやります。