街頭演説を行いました【全世代型社会保障制度と憲法9条】

10月31日(水)、呉服町スクランブル交差点の一角をお借りして街頭演説を行いました。全世代型社会保障制度、そして憲法9条改正に関する問題についてお話しさせていただきました。

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 世の中というのは、気が付いたらあっという間に変わっているもの。そして後戻りもできない形で変わっているものです。そして権力が本当の狙いを隠しているということも多々あります。
 私は今の政治の大きな問題点は、言葉で中身を誤魔化そうとすることだと思っています。私は、無所属として、なんでもかんでも反対するというつもりはありません。しかしながら、言葉で物事を誤魔化す、これは政治として最もやってはいけないことだと思っています。

 皆さんは「全世代型社会保障」という言葉を耳にしたことがないでしょうか。最近、安倍総理、政府与党が言い出していることです。
 先日行われた代表質問で、自民党の稲田議員は「高齢者にも社会保障の受け手から支え手に変わってもらう」と言いました。それを受けて安倍総理は「いくつになっても学び働ける社会を実現する。70歳になっても就労可能な法整備を進める」と答えました。これが何を意味するか、皆さんおわかりでしょうか。「年金は70歳まで払わない。払わないどころか最低70歳までは働いて年金保険料を払っていってもらう」これはそういう宣言です。
今、国の財政は、毎年20~40兆円の経常的な赤字が続くというギリギリの状態です。しかし、このことに触れてしまうと、皆さんに対する様々な支出ができなくなる。教育の無償化などもできなくなってくる。このため、与野党ともほとんどこの問題に触れていません。一方で高齢化に伴い、社会保障、年金や医療の負担は増すばかりです。ではどうするのか。今、政府与党が言い出しているのは、簡単な言葉の言い換えとして「全世代型社会保障」というふうに言葉を変えているのです。そして実際には、皆さんになるべく働いてもらって、なるべく国に負担をかけないようにしてもらおうという、大きな考え方の変革をしようとしているわけです。
 私は現状の財政状況を鑑みれば、それも一つのやむを得ない選択肢ではあると思っています。しかし、もしそうであるならば、歴代の政権与党――自民党政権だけでなく民主党政権も挟まっていますが――がきちんと国民に謝罪し、自分たちの見通しが甘かったがために皆さんから社会保険料をもらってきたけれども約束の60歳になっても65歳になっても70歳になっても年金を支給できそうにない、特に若い方は死ぬまで年金や医療費に関する支え手となって、自分が受け取るものは極めて少ないものになりそうです、大変申し訳ない、ということを、正面から堂々と話すべきです。
 イタリアやロシアでは、年金の受給年齢を65歳に挙げるということでものすごいデモが起きました。イタリアでは政権がひっくり返りました。あの強権的なプーチンさんがいるロシアでさえも、支給年齢の方たちがものすごいストライキを打ちました。
 日本では、この衝撃的な政府の宣言に対して、しかも与党の代表質問とこれに対する首相の答弁として答えるというやり方で宣言されたことに対して、マスコミは全くといっていいほど無反応です。これを伝える方はほとんどいないわけです。我々はもっと怒るべきです。政府与党はこういった本当の情報を小出しにすることによって、現実の今自分たちがやろうとしていることに対して、世間がどういう反応をするのか見ています。我々が黙っていれば、これを伝える者が誰もいなければ、そして伝えられた皆さんが怒らなければ、どんどんこの政策は現実化していくでしょう。

 私は、健康であり、ご本人が望むのであれば、70歳まで働くことが悪とは言いません。しかしながら、身体に不安を抱え、本当は豊かな老後生活を望んでいる方はどうでしょうか。
国が約束したのにも関わらず、もらえるはずだった65歳になっても年金がもらえない、70歳になっても年金がもらえない、そういった国家的な詐欺のようなことが今行われようとしている。ところがこれが明らかになったにも関わらず、誰もこのことについて追及をしていないのです。
残念ながら野党の代表質問でも、このことはスルーです。今、財政の健全化や社会保障の維持が難しいことについて、与党だけでなく野党も口をつぐんでしまっています。なぜでしょうか。そこに言及した途端、日本の今の税収あるいは支出が全く維持できなくなるからです。野党も口をそろえて言っている「子供たちの未来への投資」あるいは「子育て世代への援助」こういったことが全部できなくなってしまうからです。
 本当は今、日本の財政はどうしようもない状況の一歩手前です。財政の均衡化、これをプライマリーバランスと言い方をしますけれども、これが5年先送りされました。このことについて切り込んでいるのは、あろうことか無所属の会の野田元総理ただお一人です。
今の若い方、今の子供たちは、際限もなく上の世代の社会保障、年金を支え続けるだけで、自分たちが高齢となったときにそれを支えてくれる人はいない。つまりただ働きをさせられるだけなのです。こういうことに一刻も早く終止符を打ち、払えるものは払えるが、払えないものは払えない、今は皆が我慢のしどころだと正直に述べることこそ、政治の在り方ではないでしょうか。

 もう一つ、大きな誤魔化しが行われようとしているのは憲法9条の改正問題です。
 私にはどうも、今度安倍首相が憲法9条を改正しようとしているのは本気なように見えます。これも、稲田議員の質問に安倍さんは答えていました。稲田さんは自分が防衛大臣だったころ、50度を越える灼熱の南スーダンで、社会資本を整えるために自衛隊員の皆さんが一生懸命働いていた、これを現地の人や世界も評価した。それなのに憲法9条があるがゆえに、自衛隊が憲法違反と言われるのはかわいそうだと言っていました。それに答えた安倍総理は、憲法学者のうちで憲法9条で自衛隊が合憲だと言っているのは2割しかいない、という、とんでもない、事実と違うことを答えました。
 私は憲法9条改正を絶対にしてはいけないという立場に立つものではありません。しかしながら、改正するのであれば、なぜ今憲法9条を改正しようとしているのか、その本当の狙いを国民に説明し、どういう形で日本の安全保障を考えていくから、憲法9条を改正しようと考えているんだ、と、正直な議論を国民に巻き起こすべきだと思っています。
 例えばドイツのメルケル首相は最近、次々と選挙に負けています。それでも移民を受け入れるというのことが世界のためにも自国のためにも必要だという立場を崩さない。そして、州議会の選挙で負けたことを理由に、次の総選挙には立候補しないということも表明しました。それでも不人気な政策の旗を降ろさないわけです。正々堂々と議論をしているわけです。
 今の日本の政治に欠けるのはこの正々堂々としたところです。
 なぜ今憲法9条を安倍さん達が変えようとしているのか。それは自衛隊がかわいそうだからという今彼らが公式に表明している理由ではありません。それは米国の世界戦略の変更に伴い、日本の自衛隊、特に海上自衛隊を世界に展開させて、アメリカの補完勢力とさせたい、そういう明確な狙いがあるからです。そのためにまずやったのが、安全保障法制の整備であり、次に必要なのが憲法9条の改正なわけです。
もしも憲法9条を変えるというのであれば、そういった本当の狙いこそ国民の前にきちんと提示して、日米同盟堅持のためにどうしても憲法9条改正が必要なんだという本当の狙いを皆さんに正直に告げて、そして皆さんの審判をあおぐべきだと思います。ところが今やろうとしているのは、自衛隊が違憲だと言われることが自衛隊員にとってかわいそだという、本当の狙いとは全く離れた美辞麗句による言葉の誤魔化しで憲法9条を変えようとしているわけです。私はこういったやり方が姑息であると思えてなりません。政治家は国民に対して、自分の政策をなぜこういう風にするのか、きちんと説明すべきだと思っています。

その最たるものが憲法9条と社会保障をめぐる問題です。

今、若い人であればあるほど、社会保障が大きく変えられようとしていることについて、関心をもっていただきたい。今、安倍さんや政府与党が言い出していることは、言葉だけで聞くととてもいいことのように聞こえます。しかし、その狙い、主題は、増え続ける一方の高齢者人口、この方たちに対して約束通りの年金が支払えない。今まで通りの医療保障ができない、だからこそ思い切って高齢者にも働いてもらう、年金を受け取るどころか年金保険料を支払う主体となってもらう。老人医療制度などとんでもない、普通通りに支払ってもらう、こういう世の中です。ハッピーリタイアメント、幸福な引退などない日本社会に変えようとしているわけです。働きたいという方がいくつになっても働くということを否定するつもりはありません。しかしながら、年金をそこに絡めるのは大きな約束違反です。

 世の中の変化というのは気が付いたときに変わっているものです。なぜ気が付いた時なのか。それは今こういうことが起きているよということを説明し、告げる報道機関や政治家が少ないからです。政治家というのも所詮は利害に基づく生き物です。自分に都合の悪いことは言いません。気づいたときに大きなツケを払うのはいつも国民です。第二次世界大戦でも、ツケをその身体で払ったのは国民でした。
私はこういうことが二度と起きることがないよう、きちんと皆さんにお伝えすることが私の国会議員としての責務であると考えています。今国会で起きていることを正直に皆さんにお伝えする。そういう国会議員としての責任を果たしていきたいと思っています。