チェルノブイリ法日本版制定に関する講演会に出席しました。

 6月8日 チェルノブイリ法日本版制定に関する講演会に出席しました。

 チェルノブイリ法とは、チェルノブイリ原発事故後、被ばくによる健康被害が激増した5年目に、被害者の要求を受けて当時のソ連で制定された、住民の避難基準や国の支援を定めた法律です。この法律はソ連崩壊後、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの三国に引き継がれています。

 講演会冒頭、講師を務められた柳原敏夫弁護士(市民が育てるチェルノブイリ法日本版の会共同代表)はまず、6月3日に福島第一原発事故の健康への影響を調べる福島県の健康調査検討委員会が、被ばくと甲状腺がんとの関連性を否定するとの中間報告を発表したことに触れ、「(関連性が)ない」ことを証明するというのはいわゆる「悪魔の証明」であること、「危険が検出されない」ことと「安全が確認された」こととの間には大きな隔たりがあることを指摘されました。

 その後に続いて行われた講演では、旧ソ連におけるチェルノブイリ法制定までの経緯、わが国においても同様の法律を制定することの必要性、現状の問題点などについて、様々な視点、エピソード、過去の類似の事例などを織り交ぜつつお話しくださいました。

 講演の最後に設けられた質疑応答の場にて述べさせていただいたところではありますが、福島の健康被害調査を分析すると、発症数から推定される発症率は,一般的に言われているスクリーニング効果による上昇割合を遥かに上回っており,スクリーニング効果では説明できないものです。また,がん登録事業で福島県の20~24歳が2011年以前の10倍近く,40~45歳代で3倍と,甲状腺がん患者が激増しています。こういったことからも、事故による被ばくと健康被害との因果関係を否定することには大きな疑義があると言わざるを得ません。

 ソ連のチェルノブイリ法は、政治家の手によって成立したのではなく、ソ連各地で市民や労働者がデモを行い、民間の医師らが地道な調査を行うなどした結果、誕生したものであるとのことです。今、日本の政治家や自治体は、「風評被害をあおる」という批判の対象となることを恐れて健康被害に言及することについては及び腰になっているように見えます。しかし、果たして被ばくとの因果関係は本当に「ない」のでしょうか。

 チェルノブイリ法日本版を日本で制定するためには、事実の確定、つまり健康被害について客観性の高いデータ、公になっているデータに基づき、実際に起きている健康被害についてより詳細な調査を行い、提言を行っていくことも必要です。私も引き続き、健康調査のデータの研究、分析などを進め、この問題に取り組んでいきたいと思います。