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【国会報告】入管法の趣旨説明と質疑が行われました

 昨日(2018年11月13日),衆議院本会議が開かれ,出入国管理法改正案に関する与野党の質疑が行われました。国会,特に本会議における法案の質疑は,言いっ放し・答えっ放しとなることが多く,また,肝心の法案ではないことに対する質問が質問時間の大半を占めたりするので,議論としては物足りないことが多いのですが,昨日は与野党共にこの法案の質疑に集中しており,充実したものでした。

 まず最初にこの法案について簡単に説明しますと,これは実質的な「移民受け入れ法」です。
 人材不足の業種において,相当な知識や経験を必要とする技能を要する業務に従事する「特定技能1号」,熟練した技能を要する業務に従事する「特定技能2号」という在留資格を設けます。1号は,在留資格は5年を限度,家族の帯同を認めない,とされています。つまり,2号は,5年毎に更新可能で家族を同行して日本に住まわせることも可能な訳です。また,1号も,一定の試験に合格することで2号に移行可能とされています。つまり,延長を繰り返せば永続的に日本に家族と共に住むことが可能になるのです。しかも,この日の質疑でも取り上げられましたが,永住許可にあたっては10年以上の継続在留が要件とされていますから,最初の5年が1回更新されれば,事実上永住権を得るための資格を得ることができるのです。

 話を少し戻します。現状においては,外国人労働者の受け入れに関し,建前上は「鎖国政策」を維持しながらも現実には「技能実習」(ちょっと前は研修生)という姑息な制度を設け,外国人の方を低賃金で長時間労働させるという奴隷労働のようなやり方をとっており,国内だけでなく国際的にも強い批判が寄せられています。また,日本国内では労働力需要が高まる一方ですが,今の制度では誰も日本での労働に魅力を感じなくなり,日本で働こうとする外国人はいなくなるでしょう。
 こういったことから,唐突に臨時国会に上程されたのがこの出入国管理法改正案でした。
 私は,今の技能実習制度への疑問(廃止されるべきです)や,明治から昭和にかけてハワイやブラジル,満州,台湾に多くの日本人がチャンスを求めて移民していったという近代の歴史,それにそもそも全ての人類がアフリカからの移民であるという人類史に照らせば,正面から移民を受け入れるべきだと考えています。
 したがって,本当であればこの出入国管理法改正案に賛成したいところですが,残念ながら今回の法案には大きな欠陥があります。それは,法案の中身が「がらんどう」で,ほとんど全てを省令で決めることとしていることです。次の問題は,先にお示ししたとおり,事実上の移民,しかも永住権を持つ移民に大きく門戸を開く法案でありながら,労働力が不足している分野において,専門性や特別な技能を持つ外国人の方に一定期間の在留資格を認めるに過ぎない,と詭弁を弄した説明が行われている点です。これは安保法制や憲法9条改正論議でも行われている,安倍政権独特のやり口です。「衣の下に鎧」な訳です。3つ目は,当然起こるであろう,日本人労働者とのバッティングの問題,また日本人労働者の賃金水準の低下を招くであろうことについて,正面からの議論を避けている点です。

 さて,前置きが長くなりましたが,この日の質疑をハイライトでご紹介いたします。

  トップバッターの自民党田所議員の質問は,上記問題点について,懸念を払拭させるという観点からでしょうが,野党議員かと思うような質問がなされました。誰もが聞きたい,①「単純労働者の受け入れ」とどう異なるのか,というのが最初の質問でした。これに対する安倍総理の答えは,「今回、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお労働力が不足する分野に限り、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れることとしたものであります。これは、現行の専門的、技術的分野における外国人受入れ制度を拡充したものであり、従来の基本方針を変更するものではありません」というものであり,正面からの答えはありませんでした。どのような事実をもって「一定の専門性,技能を有し」ているとみるのか,何をもって「即戦力」というのか,あまりに曖昧です。どんな職業でも「一定の専門性,技能」は必要なのですから。この後,②受け入れ見込み数についての質問がなされましたが,安倍総理の答えは,「現在精査中。近日中に初年度と当初5年間の見込み数を出す」。常識的に考えれば,法案審議にもっとも必要な情報のうちの一つである「見込み数」すら国会審議の席上で出せないような状態で,このような法案を上程すべきではなかったでしょう。このあと,法務大臣に対し,③日本人の雇用を奪うことにならないか,④「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」とは何か,⑤在留期間の更新が可能となるため,永住者になるのではないか,⑥社会保障への影響,⑦「移民」受け入れに当たらないのか,とまさに率直かつ具体的な質問が続きました。
 法務大臣の答弁は,③「日本人雇用との競合」,については,所管官庁が適切に把握して受け入れ停止措置を講じる,との答えでしたが,それでは単なる雇用の調整弁を外国人労働者に担わせるだけです。技能実習制度と同じく,あまりにご都合主義でしょう。④「技能とは何か」については,具体的な答えはなく「相当期間の実務経験」「日本語はある程度の日常会話」「業種に応じて面接」など抽象的なものばかりでした。⑤「永住権」とのからみでは,まさに正面からの答えはなく,法に定められた観点から審査する,という木で鼻をくくったような答えでした。⑥社会保障への影響については,主に不正防止の観点からの答えにとどまりました。⑦「移民ではないか」については,「政府としては、例えば、国民の人口に比して、一定程度のスケールの外国人及びその家族を、期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持しておこうという政策をとることは考えていません。」と斜め横からの答え。移民政策を問うているのではなく,移民にあたるか否かが問われているのですが。逆に言えば,政府の移民の定義は「「国民の人口に比して、一定程度のスケールの外国人及びその家族を、期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持しておこうという政策」によって受け入れる外国人及びその家族」ということなのでしょう。

 次は,立憲民主党の山尾議員。この方の質問はいつも中々キレがあり,楽しみにしています。この日もスイスの小説家の「我々が欲しかったのは労働者だが,来たのは人間だった」という,まさに言い得て妙,な言葉の紹介から始まり,①技能実習の問題点(最低賃金以下,失踪者が失踪せざるを得なかった事情を記した聞き取り調査票の公開),②移民の定義と移民政策,③在留期間の更新と10年を要件とする永住許可との関係,④単純労働との違い,⑤受け入れ業種(現在14業種)選定の透明性と公正性,⑤受け入れ見込み数,⑥日本人の賃金水準への影響,⑦社会保障への影響,⑧家族まで帯同させながら景気の調整弁とするつもりか,などが続きました。
 その答えは,安倍総理,法務大臣共に先に紹介した自民党議員への答弁のオウム返しであり,全体的に「話を逸らしている」というしかない答弁でした。

 国民民主党の階議員の質問は,「骨皮だけの筋なし法案」との皮肉に始まりましたが,「本法案が肝心な部分を法務省令に白紙委任し,法案成立後に法務省が実質的な立法権を行使しようとすることは,国会を唯一の立法機関とする憲法41条に照らしてみても問題です」との指摘がなされました。なるほど,と頷かされました。仰るとおり。
 また,「外国人を単なる労働力として扱うのではなく同じ人間として扱い,日本人として共生して地域社会になじんでいける体制を整える必要があり」そうでなければ「日本人と外国人との間に心理的,物理的な障壁ができ,国民の不安と不満が高まりかね」ず,「将来的には日本の経済界がいくら望んでも外国人の側が日本で働くことを選択しなくなる時代が来るかもしれません。」という指摘は全く同感でした。
 そのほか,①骨太方針に示された,前提条件となる生産性向上や国内人材確保のための取り組みがなされているのか,②技能実習生の声を聞かないのか,などの技能実習制度とからめた質問,③転職の自由により地方の人手不足が解消しないのでは,などの質問がなされ,独特の切り口を感じました。
 そして,①②に関し,再質問,再々質問がなされましたが,総理の答弁は「業界ごとに異なり,法律で定めることはできない」,「所管の法務省で行う」などといったものでした。

 公明党の濱地議員の質問は,公明党らしく,細かい論点を押さえていく,というものでした。①なぜ来年4月から受け入れ拡大するのか,②国内人材の就労・処遇改善策,③受け入れ業種の検討状況,その判断指標は何か,④10年の永住要件と5年就労資格との関係,⑤悪質ブローカー排除と就労先倒産などの場合の支援,⑥雇用形態として派遣を認める分野,⑦技能実習生の失踪問題,⑧1号外国人に家族帯同を認めないことの人道的問題,⑧新たに創設される出入国在留管理庁,⑨地方公共団体への支援,を取り上げました。
 質問を聞いていて答弁で何が出てくるのか,と期待したのが,①,③,⑥でした。
①なぜ来年4月か,についての安倍総理の答えは「人手不足が深刻な状況」でした。このあたり,「専門性,技術力を有する即戦力」を受け入れるもので,単なる人手不足解消のためではない,とする建前と矛盾したのではないでしょうか。③判断指標,については有効求人倍率以外には示されませんでした。⑥派遣を認める分野,については「派遣形態が真に必要不可欠な業態」との答えで,まさに「問いを持って問いに答える」で,答えにも何もなっていなかったと感じます。

 無所属の会の黒岩議員の質問も独自性があって興味深いものでした。
 法案の建て付けが,「第一段階:法案成立」,次に「第2段階:政府基本方針で,通則的な受け入れ基準,技能水準を閣議決定で定め,「第3段階:分野別運用方針を各省庁が定め」「第4段階:法務省令改正で初めて具体的な業種名やその数が決まる」となっているので,質問して何も答えられないだろう,という指摘がありました。総理や法務大臣の答えが抽象的なものにとどまっている理由を明快に説明したものでした。

 共産党藤野議員の質問も,同党らしく,技能実習生の悲惨な実態の紹介とその改善を求める指摘。1990年の入管法施行以来,在留資格を次々と追加しながら外国人労働者を技能実習生,留学生,日系人の受け入れを行ってきたが,安価な労働力として利用してきただけで,これ以上のごまかしはやめるべき,という指摘はまさに正論でした。

 維新の会の串田議員の質問は,2号の存在で外国人にのみ5年更新の有期契約が認められるので日本人の正規雇用の機会が失われないか,技能実習生の7000人以上の失踪者がなぜ見つけられないか,介護分野の労働力不足を低賃金の外国人労働力で埋めるのは,日本人労働者の環境改善を阻害するのでは,という,同党らしい観点からの質問がなされました。

 最後に総括します。政府側答弁に物足りなさが残ったものの,法案及びこれに関連した制度の内容に集中した,白熱した質問が今日の国会本会議にはありました。さらにいえば,待ったなしかつ日本の将来を大きく変えていくであろうこの課題について,政府側を問い詰めるだけではなく,「我が党はこう考える」,という正面からのぶつかり合いも今後の委員会質疑及び採決時の反対討論・賛成討論において行われることを期待したいと思います。